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道なき未知

二年前の6月の満月の晩に、私はこんなエッセイを書いている。



ーーーーー

「ありのままで」

私は私以外の人間にはなれない。
あなたは、あなた以外の。

けれどありのままというのは、そこにとどまることではないし、
進むことを諦めることでは、けして、ない。
できないことに優しい言い訳をすることでもないし、
自分を甘やかすことでも、ない。
ありのままの自分を受け入れるということは、
不可能を可能にするための決意をするということ。今、ここで。
定めた目標までの距離を正確に計り、
そこまで
あとどのくらいでいけるのかを見極めること。
何が足りないのかを、しっかり、見る、こと。
謙虚になって自分の過ちを正すこと。
目を逸らしてはいけない。
誤魔化してはいけない。
傲慢な自己満足に負けてはいけない。
ありのままを受け入れるということは、
マイナス部分を肯定することではない。
プラスだと偽ることでもない。
しかし否定することでもなく。
正しく認識するということだ。
激しい落ち込みや自己嫌悪は、
ありのままを見ようとする時によく起る。
怖くなって引き返す人もいるが、そんな時こそ前進するべきだ。
進むために
それまでのやり方を変えなければならない瞬間が、必ず訪れる。
進化することや、成長することの秘密は、そこにある。

あなたは私になれないし、私もあなたには、なれない。

けれど
あなたはもっとあなたになれるし、
私はもっと私になれる。
まだまだ、深い場所の、
眠れる力を呼び覚まし、
もっと、もっと。

そういう意味では、人は
生きている間にどんどん変わっていくものだと思う。

この、最初の一歩としての認識に狂いがあるとしたら、
どんなに忍耐強く、積極的な努力家であったとしても、
だめだと思う。


ーーーーー



まるであの時、あの人は、
戦士のようだった。
自分の運命を守る、
孤独な戦士。

さぞかし痛かっただろう。
苦しかっただろう。
辛かっただろう。

そのどれをも私は実感として理解できる。
なぜなら、
私もそこを通ったことがあるから。

道なき道をゆく者は、
いつでも未知なる世界へ足を踏み入れる。
すべての者にとっての第一歩を踏み出す。
たったひとりで。

勇気を出し開けた扉の向こうに辿り着いた時、
あなたは初めて知るだろう。
これまでの喜びは偽りのエクスタシーだったことを。

真の恍惚とは少なからず痛みを伴うものなのだ。

世界の法則は、陰陽の法則。
必ず両極端、あるいは、ふたつの極を持つ。
どちらか一方だけということは有り得ない。
もしもこれまで楽しいだけだったなら、
それは大切な片方が足りなかったのだ。

今、痛みを感じ始めたなら、
やっと真実に手が届く時期がきたという証。

本当の快感を人に与える時、
表現者本人が必ず心地良さの中にいるとは限らない。
血を吐くような苦しみの中でもがいている姿こそが、
人々に感動を与えるということも有り得るのだ。
なぜならば、いつだって、
ぎりぎりの縁で本気を出している姿ほど感動的なことはないのだから。

その姿ほど、美しく、人の心を打つものはないのだから。

しかしやがてそれもまた、余裕を生み出し始めるだろう。

そうなったらまた次の旅が始まる。

そうして果てしなく続いていくのだ、道なき未知は。







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